受験指導を開業して初めて申し込んでくださった方がうさこさんでした。そのうさこさんが見事合格してくださって、自分が合格したときよりも嬉しかったです。改めておめでとうございます!
ここでは、うさこさん(以下、Uさん)とどんなレッスンをしたのか、ご本人の許可をいただきご紹介します。
*Uさんの受験歴*
一次試験:5回
二次試験:2回(今回が3回目)
令和2年度 50/30/58/69
令和3年度 63/45/58/65
■Uさんの感想
やっぱり事例Ⅱなのかぁ。
1年目の事例Ⅱが30点、2年目の事例IIが45点。
過去問では取れるのに本番でどうしても取れないのが事例Ⅱでした。
エミリーさん(=松永)が診断士試験の個人指導を始めようと考えてる、と聞いてすぐお願いしました。
エミリーさんは何か講義をするわけではありません。
解いた過去問に対して、頭の中をさらけだす「なぜなぜ分析」と、どうやったらうまくできるかの手法探しを一緒にしてくれます。
やってみてダメだったら違うやり方など、柔軟に対応してくれました。
私は(エミリーさんも?)、思いついた答えがたまたま当たってもあまり意味がないと考えています。
与件を根拠に、どういった考え方で答えを書くか、ということをひたすら詰めました。
授業では「思考の癖」の矯正からスタートでした。
繰り返し言われたのは、「与件にあること以外で使っていいのは一次知識のみ」
事例Ⅱで暴走しがちな私への強いメッセージでした。
一事例で失敗して40点になっても他でカバーできるように、全ての事例で70点を取る目標で進めました。 ふぞろいベースの採点で設問ごとに8割以上とれる答案作りの再現性を高めました。
同じ問題を3回解き直すよう言われることもしょっちゅうでした。 私は今回は一次試験があったので、8月2週目からの3ヶ月お世話になりました。 初めのうちは週に2事例、最後のひと月は週に4事例を解いて確認してもらいました。
当日事例Ⅰ〜Ⅲでは、「まなび生産性向上」でやってきた通りにできたと思います。
割と得意だった事例IVで大崩れしてしまいながら合格できたのは、全科目70点を取る訓練をしてきたからだと思います。(松永追記:75/67/64/53 259点での合格でした)
試験後も落ち込む私にかなりフォローをしていただき、感謝しています。
エミリーさん、本当にありがとうございました。
■レッスンスケジュール
一次試験終了後の8月10日にオリエンテーションを実施し、8月、9月、10月の3ヶ月間、二次試験の指導をさせていただきました。
過去2回の点数では明らかに事例Ⅱだけ低い点数となっていたので、まずは事例Ⅱを一緒にふりかえりました。
すると、事例Ⅱの点数が低い理由がすぐにわかりました。与件に書いていない知識を使って答案を作ってしまっていたのです。
■実際に行ったレッスンの事例
●令和3年度事例Ⅱ第4問
例えば、令和3年度事例Ⅱ(豆腐の製造販売業者)の第4問。
「主婦層の顧客獲得をめざし、豆腐やおからを材料とする菓子類の新規開発、移動販売を検討している。製品戦略とコミュニケーション戦略について、助言せよ。」
Uさんの答案の抜粋
「子供の食育に関心があり、自宅での食事にこだわりを持つ主婦を対象に、最後に焼くなどのひと手間をかけて完成する手作りお菓子製品を訴求する。」
与件に書いてあったこと
「豆腐に旅をさせるな」といわれるように出来立ての豆腐の風味が最も良い。
「手作り豆腐セット」が人気。手間のかかる商品であるが、出来立ての豆腐を味わえる。
自宅での食事にこだわりを持つ家庭が増え、お得意さま以外の主婦層にも人気を博している。
私「この問題では、どうして手作りのお菓子にしようと思ったんですか?」
Uさん「手作り豆腐セットが人気とのことだったので、お菓子も手作りを考えました。」
私「手作り豆腐セットが人気なのは豆腐は出来立てが美味しいからですよね?お菓子には当てはまらないのでは?」
Uさん「あと、ちょっとひと手間加える料理キットが主婦の人の罪悪感を払拭するから人気だという話を聞いたことがあり」
私「現実世界のアイディアとしては素敵ですが、試験の解答としては書かれていない雑学を使ってはダメなんです。」
Uさん「なるほど、診断士試験は『その場にいる全員が思いつける内容を書く』って聞いたことがありますが、こういうことだったんですね…!」
Uさんは仕事でマーケティングに携わっていらして、博識な分「素敵なアイディア」が思い付いてしまいます。
自分だけのオリジナル知識を使ってしまうと、普段の業務なら利益につながる提案だとしても試験では加点されない答案になってしまいます。
このように、多年度生でなかなか合格点に届かない方や、足切りレベルの点数を取ってしまう方には、下記の共通点があります。
【多年度生・足切り答案の共通点】
与件文にないアイディアで解答してしまう
「二次試験のセオリー」は知ってはいるが、具体的にどのように解答に落とし込むのか理解できていない
過去問から学ばず、ご自身の経験や予備校で聞いた知識を無理やり当てはめて解答してしまう
もしかして、自分にも当てはまるかも?と思った方はいませんか。
やっかいなことに、これらの思考の癖は、なかなか普通に勉強しているだけでは自分で気が付くことができません。
まなび生産性向上プログラムでは、一つ一つミスが起きる要因や、得点が伸びない要因をマンツーマンレッスンで紐解いていき、なぜそれが間違っているのか、腹落ちしていただいたうえで改善策を指導します。
●令和3年度事例Ⅱ第3問
「移動販売において、置き配を導入する場合に、それを利用する高齢者顧客に対して、どのような取り組みを実施すべきか。」
Uさんの答案
「人との接触を避けたい気持ちに応え、冷蔵ボックスで次回注文カードを置けるようにし、継続的利用に繋げる。」
与件に書いてあったこと
・高齢者顧客とのやり取りは来店前の電話での通話が主体である。
・インスタント・メッセンジャー(IM)の利用を勧めた時もあったが敬遠されたため、電話がメインになっている。
私「この問題では、どうして電話を書かなかったんですか?」
Uさん「私、電話って許せないんですよ!」
私「笑」
●令和2年度事例Ⅱ(ハーブの農業生産法人)
Uさん「アンチエイジングが薬機法に抵触しそうで怖くて書けなくて…」
など、色々と気になってしまって与件に書いてあることを素直に書けない傾向も見受けられました。
これも試験なので
与件の流れに逆らわない
「高齢者には電話が好まれましたよ」という事実として整理する
「ハーブが有するアンチエイジングの効能」という予件は疑わなくてよい
など、与件ファーストな姿勢が必要となります。
このように、マーケティングに携わっている故の知識・こだわりが事例Ⅱ不調の理由だと判明したので、過去問とふぞろいを使ってその矯正をしていきました。
与件文に書いてあることや、ふぞろいの解答に対して、それは違う!と思った経験はないですか?
あくまでも、中小企業診断士の二次試験における正解に近いと思われる解答をすることが大切です。
プログラムの中では、何度でもそのことをお伝えします。
■解答作成プロセスにおける課題と対応策
●字数のもったいなさと多面性不足
Uさんの答案は
1つのことをたっぷりの字数を使って表現する
制限字数ギリギリまで使わず隙間が多い
という傾向がありました。
試験では漢文のように詰め詰めにして要素を詰め込めるほどお得な構造になっています。
例えば打率75%の場合、4つ詰め込めば3つは正解できますが、2つしか書いていないと1つしか正解にならないからです。
それなのに1つのことをたっぷりの字数を使って更に字数を余らせるのはもったいなさすぎます。
原則3つ以上の要素を答える
残り10文字でも「売上拡大を図る。」のように効果を詰め込むとか、とにかく何か書いて字数を余らせない訓練をしました。
また、
課題と対策を100字で問われたら基本は課題50字・対策50字が理想ですが、そうなっていなかった
効果の最後まで言い切れておらず、尻切れトンボ感・物足りなさが残る(「風が吹けば桶屋が儲かる」まで言えておらず、「風が吹けばねずみが増える」のような文章になっていた)
点も見受けられたため、合わせて訓練しました。
レッスンでは
「こういうときはこういう内容を書くと良いですよ」といった知識系だけでなく、
「○○を書かなかった理由は?ではこういう工夫をしてみましょうか」といったプロセス系の話もします。
印象的なプロセス対策をいくつかご紹介します。
●蛍光ペンの引き方
Uさんは第1問は青、第2問は緑…など問題ごとに蛍光ペンの色を変えて関連する与件に線を引く派の方でした。5色の蛍光ペンを使ういわゆる「多ペン持ち」タイプ。
一般論として、ペンの数が多いほど持ち替えに発生する工数が増えるので作業時間が増えるのですが、このやり方が慣れているとのことだったので多ペン方式を継続することにしました。
ある事例で、明らかに与件を抜き出せば良いだけのものを書き漏らしていました。
与件文を確認すると、そもそも蛍光ペンが引かれていなかったことがわかりました。
私「この抜き出せといわんばかりの与件箇所に線が引けなかった理由ってなんだと思いますか?」
Uさん「うーん…第1問から第5問まで設問解釈して線を引き始めるので、第1問のことをもう忘れてるんですよね。」
私「なるほど。じゃあ第1問を忘れる前に線を引き始めることが必要ですね。」
Uさん「そしたら、まず第1問の色ペンだけ持って第1問に関する与件だけをひたすら線引いて行って、終わったら第2問の色ペンに持ち替えて第2問だけ線引いて…ってやってみます!」
変更前:与件に線を引くwith 5色×1周 だったのが
↓
変更後:与件に線を引くwith 1色×5周 となり、与件を前から後ろまで目を通すのを5周やるように変えました。
この変更によって、与件漏れが防がれ、ペンの持ち替え回数も減らすことができ、良い対策だったと思います◎
多くの予備校では、解答した答案用紙だけで添削とアドバイスをされると思いますが、当レッスン内では、解答用紙やメモをすべて確認し、どのプロセスでミスが発生しているのかを特定したうえで対策を立てます。
レッスン中の講師との対話・指摘をもとに、生徒様はさまざまな気付きを得ます。
最終的にはご自身で振り返りながらミスの要因を特定し、改善策を立てて、自走できるようになります。
ここで身につけることができる正しい振り返りの方法は、特定の科目や診断士試験だけでなく、すべての勉強に通じる、誰もが身に着けるべき正しい勉強方法なのです。
●事例3の解法が定着していない
事例3は「できていないことをやってくださいと言う」事例です。
Uさん「与件にロットが過大と書いてあったので、最初に読んだときは『どこかの問題で小ロット化を答えるんだろうな〜』と思ってたのに、問題を解き始めたら忘れていました。」
ということで、与件を読む1回目のタイミングで「できていない」表現が登場する度に「→やるべきこと」を横にメモしていくことにしました。
とりあえずやるべきことを洗い出しておけば、そのあとゆっくりどの設問でどの要素をいれるか漏れなく当てはめることができました。
このように、ミスしてしまう要因を特定し、ミスしないようにするにはどうしたらいいのか、プロセスに落とし込むことが大切です。
多くの人は、「次は間違えないように気を付けよう・・」と思って終わってしまうでしょう。それでは、超緊張している本番においては絶対同じミスを繰り返してしまいます。
●事例4の電卓操作ミスによる失点
Uさんは理系出身ということもあり、さすが理系要素の解釈は素晴らしかったです。
ただ、電卓のミスが目立ち(目の前で「ちょっとやってみてください」で打ち間違えたときはお互い笑いました…笑)以下の工夫をしました。
・GTを使うミスが多いためGTは使わないことに
・-0.9を+0.9してしまったので、-は△や+(-0.9)で書くことに
・4と+を見間違えてしまったので、それらは特に丁寧に書く
・式が複雑すぎると電卓ミスが増えるため、1-xではなくxと置くなど、変数の置き方で式がシンプルになるものはそのように
また、数学が出来てしまうが故に、複雑な問題をいつまでも撤退せず沼ってしまう危険性がありました。
去年のレジ取り替えの問題などは複雑すぎて計算ミスを全くせず正解できる可能性は低いため、沼る前に飛ばして他を完璧に仕上げてから、最後に思う存分解いてもらう方針にしてもらいました。
超難易度の高い問題でも、「捨てる」のは勇気がいりますよね。解けるのではないかと思って、深追いしすぎてしまった経験がある多年度生も多いでしょう。
当レッスンでは、過去問を研究しつくした講師が、生徒様の習熟度に合わせて、解くべき問題と捨てるべき問題を指導します。
過去問の取り組み状況、他の事例の習熟度も考慮してアドバイスるため、本番でも安心して対応できるでしょう。
■まとめ
3ヶ月も一緒に勉強したのでまだまだ書ききれないくらいあるのですが、抜粋すると以上のようなPDCAを回し続けました。
これから二次試験を受けられる方もぜひ参考にしてみてください。
■補足
うさこさん、感想もありがとうございます!
「私は(エミリーさんも?)、思いついた答えがたまたま当たってもあまり意味がないと考えています。」
うさこさんはこの基本の考え方を最初から持たれていたので、すぐにPDCAを回し始めることができ、3ヶ月間PDCAサイクルをフル回転できた感覚でいます。今振り返っても、私にとってもとても楽しい3ヶ月間でした。ありがとうございました!
そして本当に本当におめでとうございました!!
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